寝坊して、後はいつもと同じ。 ギタリストは回復した。 きょうのイベントステージのローテーションは、僕たちのショーの前にハワイのダンサーたちのスペクタキュラーなエキシビションがある。 マオリ族のように入れ墨をしていて、伝統舞踊を踊ったり、ハワイアン・ラウンジ・ミュージックという感じの歌を歌ったりするのだ。 頭から足まで入れ墨をした50ちょっと過ぎぐらいの興味を惹かれる歌手がいて、とてもおもしろい。 まるでヘンリー・ロリンズ みたいな人が、フレッド・ボングストのジャンルの歌を歌っているようなのだ。 でも一番盛り上がるナンバーは最後に登場する。 火のついたトーチを両手に持ったダンサーが、これを投げ上げたり、さらに危険な方向にダンスは発展していくのだ。 (訳注1: ヘンリー・ロリンズ (Henry Rollins) 全身タトゥーに埋まっているかのような、マッチョなアメリカン・ハード・コアのヴォーカリスト。) (訳注2: フレッド・ボングスト (Fred Bongusto) 往年の、ナポレターナ〜イタリアン・ポップスのシンガー。)
20分でステージセットが変えられ、僕たちの番だ。 最初の二日間のよくできたコンサートのおかげで、観客の中にイタリア人も増えている。 多くの情熱的なイタリア人の若者たちが、会場に来ている日本人の女の子たちと仲良くなる口実に僕たちを利用している、ということもチェックした。 彼女たちをステージ前のダンスに誘い込み、やがてコンサートの後、女の子たちといっしょにサイン本部に現れ、モデルみたいにかっこよくポーズを決める。 「さあ、君のためにサインをもらってあげよう。 僕にとっては、この人たちは兄弟みたいなものだからね。」 この “クリエイティブな欲望” という、イタリアでサッカーの次に競技人口の多い国民的なスポーツの役に立てるとはうれしい。


共感レベルはますます高まり、イヴァンはコンサートの度に50枚ぐらいCDを売上げている、それとTシャツも。 観客の中の年配に人たちにも注目してもらえるというのは、思えば感動的なことだ。 今や過ぎ去ってしまった20世紀の信じられないようなできごとの中を生きてきた人たちが、世界のどこか遠いところからやって来た僕たちと、僕たちのやかましい音楽に、がまんして本当に注意を払う決心をしてくれる。 そして、このにこやかで興味津々の初老の人たちも、おおぜいCDへのサインを求めてやって来るのだ。 あいさつを交わし、サイン。 心からリラックスして喜びに浸る。
その後、小グループに分かれて大阪の街に繰り出す。 これまでとは違った地域を訪れ、下駄や木でできた飾り物の刀など、いろいろ買ったりする。 残念ながら若者向けの店においてある品物は、ほとんど欧米的なものばかりだということがわかった。 特に値段がリーズナブルという他、とりえがない。
チーポ、マックス、ユキとスタッフの何人かが、オルタナティブ・ミニ・トラッシュ・フード・ツアーをやってみることにして、 仕事帰りの男の人専用のちょっと食べながら一杯やる、みたいな小さな飲み屋を発見する。 食べたいものを指を差して注文できて、いろんな食べ物屋の中でも三流の払いで済む店だ。 これに熱狂した彼らは、探索の範囲をスープの中にスパゲッティが入っているやつを食べさせてくれる街角の屋台にまで広げる。
他の連中はホテルに戻ったが、まだ開いている食事のできるところがもうない、という事態に直面する。 長いこと探し回って、ホテル近くのいくつかある高層ビルの中に夜通し開いているレストランを見つけた。
ただ一人だけ、ニンジャは別行動だった。 こいつは、この別世界にいてもセリエAの試合の最終日を忘れなかった。 (訳注: ニンジャはトリノの人気サッカーチーム 「ユベントス」 の大ファン。 このとき、ユベは最終戦を勝てば2001−2002シーズンの覇者となる、大事なポジションにつけていた。) 忘れないばかりか、情報を収集しつつ、グラナータの連中 (訳注: トリノのもう一つの人気サッカーチーム、「トリノ」のファンのこと。) に気づかれないように何食わぬ顔をして、まさかと思うようなスタジアム・カフェを発見することに成功していた。 巨大スクリーンがあり、壁にはイタリアのサッカーチームのユニフォームが飾られている店だ。 店の中には15人ぐらいの常連客がいて、このうち何人かの日本人はインテルとユベントスのユニフォームを着ている。 ニンジャの、一人だけでスクデット (訳注: この場合、セリエAでの優勝を意味する。) に向かってまっしぐらというもくろみから、たった一人排除できなかった人物、それは、ミルコ。 彼は、僕たちのプロダクション・マネジャーで熱狂的なグラナータだ、リミニ出身なのに。 きっと、このミルコが、日本人の常連客を震え上がらせたそのシーンを証言してくれるだろう。 4対2でユベントスがラツィオに勝利するのを目の当りにしてのニンジャの野性的なありさま、うちのドラマーが歓喜の発作に襲われ、絶叫しながら転げまわるその姿を . . . 。